StyleNorwayWebMagazine 【スタイルノルウェー】

 

 

最近、あえてクセにしていることのひとつが地球儀を見ることだ。地図ではなくて地球儀。もっと正確に記せば、メルカトル図法の地図ではなくてと加える必要があるだろう。メルカトル図法は、地球を円筒に投影した地図で、経線は平行直線に、緯線は経線に直交する平行直線で表現されている。日本で、最もポピュラーな地図といってもいいだろう。グーグルマップもこの図法にやや近い。この地図の長所は角度が正しいことで、海図なんかに便利だ。短所は、緯度によって縮尺が変化するから、広範囲の角度や距離や面積が正しくないこと。これは、思わぬ落とし穴が潜んでいる。たとえば、この図法だとグリ―ンランドの面積は実際の17倍にも膨れて描かれている。まあ、グリーンランドは縁遠いから人ごとだと思うかもしれないが、こんな例はどうだろう。北朝鮮からまっすぐ横に線を引くと日本を越えてアメリカ大陸に到達する。メルカトル図法だとそうなる。だから、「万が一北朝鮮からアメリカ本土にミサイルが飛ばされたら、日本上空を通過するからアブナイ」。実は、これもメルカトル図法による大きな錯覚だ。仮に北朝鮮の平壌からロスやN.Y.へ“最短距離”でミサイルが飛んだとしたら、日本の国土の上空は通過しない。

実際に地球儀で平壌とロスやN.Y.を結べば一目瞭然だ。そうした錯覚の多くを地球儀は指摘するのである。同じように、日本人にとってノルウェーが、なんとなく遠い国のイメージを持つのも、この地図による短所が原因のひとつだと思っている。例えば日本から最も近い、国際空港のある欧州の都市を想像してほしい。恐らく、イタリアかギリシャ、あるいは東欧の都市をイメージされるだろう。実は、ノルウェーの北極圏の都市、トロムソなのである。日本から直行便で飛べば、9時間以内に到着するはずである。これも、地球儀を見れば一目瞭然なのである。以前は、日本からの直行便が飛んでいたこともあって、トロムソは日本からもっとも近いヨーロッパだったのだ。もっとも、トロムソは冬のオーロラ観光の玄関口として、最近は日本人にも人気が高いから、近い将来は直行便が復活するかもしれない。個人的には、妖精が棲んでいそうな幻想的な冬のトロムソが好きなので、冬のオーロラシーズン限定でもいいから、どこかの航空会社が飛ばしてくれないかなあと願っている。まあそれまでは、地球儀で空の便ならぬ空想の便りを、トロムソまで飛ばしてみるとしようか。

 

◎トロムソ

北緯69度67分東経18度97分に位置するノルウェー北部の都市。人口は、2013年のデータで160,418人。
北極圏内に位置し、11月下旬頃から1月中旬頃まで極夜が続く。オーロラ観光の入り口でもあり、“世界最北の○○”がいくつも存在する。