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「ノルウェー人のルームシェア・メンタリティ」

「実家を離れたのは、何歳の時ですか? 」この質問をノルウェー人にしたら、ほとんどの人は「高校を卒業した18歳の時だ」と答えるでしょう。「もちろん」という言葉を付け加えるかもしれませんね。私は、日本の友達に半分冗談交じりに「ノルウェーの親は、頑張れと言って子供達が高校を卒業したら放り出すんだ。クリスマスには帰っておいでと言って。子供達も、両親と一緒に住む窮屈さから早く自由になりたいと思っているものさ」と伝えています。ノルウェーでは、実家を離れることは成人になる儀式のようなもので、早すぎるということはありません。一方、日本では、できる限り、あるいは結婚するまで両親と一緒に住むことが珍しくないようですね。
実家を離れた若いノルウェー人は、どこに住むのでしょう? 小さなアパートを見つける人もいます。大学の近くに住む場合もありますし、学生寮へ引っ越しする人もいます。しかし、大多数の人にとって最も便利で最も望ましい(そして最も安い)オプションは、「kollektiv」(コレクティヴ) 、つまりアパートや一軒家を仲の良い友達や全く知らない人とシェアをして住むことです。借りた家の部屋数にもよりますが、「シェアハウス」は、普通2〜5人で男女一緒に住みます。私の場合は犬や金魚、そしてハムスターも一緒でした。シェアハウスでは絆を築き、社交性を磨き、他人からさまざまなことを学びます。あなたがどのような問題を抱えていても、ルームメイトがそこにはいます。決して一人ではありません。時には、掃除の仕方や、音が気になったり、いろいろな不一致もあるでしょう。しかし、そのような問題を解決する方法を学ぶことが、シェアハウスという経験の重要な部分なのです。
ルームシェアリングは、日本でも、特に家賃の高いことで有名な東京では、以前より珍しくなくなりました。しかし、ノルウェーと比較すると、まだまだ目新しいと言えます。私自身について言えば、私は、杉並区のシェアハウスに住んで3年目になります。この家には、有名な建築家である丹下健三氏が若かりし頃、今から70年以上前に借りていた部屋があります。私のルームメイトはほとんどが日本人で、男性も女性もいますが、こうしたライフスタイルはとても珍しいのです。たいていの日本人は、私の家を外国人男性だけが入居できる「kollektiv」(シェアハウス)だと思うようで、「日本人も住んでいるんだ!」というのが、一般的な反応です。
人によって異なりますが、私にとって、古くからの友達や新しい友達と一緒に「kollektiv」(シェアハウス)に住むことは、楽しくもあり、ためにもなります。誰にも話しかけられない6畳一間に一人で住むよりも、よっぽど魅力的です。また、東京を含め、いろいろなシェアハウスでのパーティーで人生の伴侶に出会った友達は10人以上います。ということは、ノルウェーのライフスタイル「kollektiv」は、婚活にも良いといえるのです。あなたも、ぜひ一度、シェアハウスに住んでみてはいかがでしょうか?

 

イングヴェ・ヨハン・ラーセン

東海大学 文学部北欧学科 非常勤講師/翻訳家

 

 

ノルウェー語への訳書は
『バトル・ロワイアル』(高見広春著 太田出版 1999年)
『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹著 文藝春秋 2007年)