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[JØTUL/ヨツール] http://jotul.co.jp

東日本大震災でも緊急支援物資として検討された薪ストーブ。 このヨツール F 602モデルは、上部にはホットプレートが付いて、煮炊きもできる優れものなのです。

ノルウェーには、「住宅には必ず煙突をつけておくこと」という条例があります。ノルウェーの家庭のエネルギーの主力は、日本と同じで電力です。ただし、冬季に極寒を迎えるノルウェーでは、万が一風雨や倒木で電線が切れたら、それこそ生命に関わります。薪ストーブがあれば、当座の暖と煮炊きは確保できる、というわけです。薪ストーブの威力はそれだけではありません。物理的な暖かさのほかに、炎のゆらぎや、薪の燃えるパチパチという音や香りなど、五感からほぐし心を温めます。災害時にこれほど頼もしい存在はないでしょう。薪ストーブの前に集い、体を寄せ合えば、多くを語らずとも心をひとつにすることができます。こうした薪ストーブの底ヂカラは国際連合からも注目され、写真のF 602は、国際的援助物資としてリストアップされています。そして、1992年に勃発したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の際には、飢えと寒さに苦しむ何千人もの難民のために、国際連合からヨツール社に相談がきたそうです。ヨツール社は約1ヶ月で、F 602を14,000台生産。国連難民地帯の人々に供給し大活躍したそうです。実は、今回の東日本大震災の際も、ヨツール社は日本赤十字社を通してF 602を寄付するという決定をしました。ところが、煙突問題などさまざまな障害があり、実現には至っていないといいます。実際に、煙突だけが問題ではないでしょう。「津波の後、瓦礫と木片の山しか残らなかった被災地では、寒ければいくらでもその辺の廃材を燃やして焚火をすることが出来た。それなのに、木屑といえども他人の所有物を勝手に燃やすことができないとか、焚火をすることはCO2を出すことだから京都議定書に違反するとか、そういう場合でさえ杓子定規に考えるような思考の硬直した人が、今も残っているというのである」と『Will』誌4月号で曾野綾子さんが指摘するように、“思考の硬直化”も薪ストーブ寄付を拒む障害のひとつになっていたのではないでしょうか?現在、ヨツール社は被災地への供給を、民間ベースで模索しているそうです。そもそも、このモデルは、戦時中の緊急対策として小さくて経済的な暖房器具を求められて、1938年に誕生したというのですから、まさに人々を救う究極のライフラインなのです。

Jøtul F 602 ヨツール F 602(ブラックペイント)
ヨツールの歴史を語るベストセラー商品。1台で61畳もの広さをあたためる。
サイドにはノルウェー王家の紋章でもあるノルウェーライオンがレリーフされている。
SIZE W32 H64 D54cm 78kg ¥231,000